2014年3月21日金曜日

日本音楽理論研究会第14回東京例会 発表概要 寺内克久

The Beatlesの和声進行分析から、コード進行による作曲技法を考える」



イギリスのロックバンド、The Beatles(以下”ビートルズ”)の活動期間は1962年〜1970年のわずか8年であった。しかしその音楽的かつ商業的な成功は、ギネスワールドレコーズに「最も成功したグループアーティスト」と認定されており、様々な面において、その後のポピュラー音楽全般に新たな潮流を作り出した。

本発表では、ビートルズの全
213(公式/準公式アルバムより)のオリジナル楽曲から、特徴的な115例の和声進行を分類し、その和声進行の特徴の概略を紹介する。さらにその特徴を活用して、コード進行の枠組みを用いたポピュラー作曲技法の可能性を考え、ビートルズが残した音楽的遺産について和声面から言及する。

本発表で紹介するビートルズの楽曲例は、ハ長調の主要三和音を用いてト長調を作り出す《
A Hard Days Night》、長三和音の増四度進行と半音進行を組み合わせた和声進行を持つ《P.S. I Love You》、ポピュラー音楽において常套的和声進行である”ライン・クリシェ”を用いた例として《Something》、属七和音が連続する楽曲(変則ブルース的楽曲)の例として《Come Together》、CGDAの四つの長三和音が連鎖する《A Day In The Life》の五例である。

用意したその他全
115例は、ポピュラー楽理に興味のある方向けに全てエクセル表資料にまとめたので、あわせて検分頂きたい。

これらの例示する楽曲の和声進行について、ギターフレット
(指板)上での和音の押さえ方を用いて発表者が考えるビートルズ的和声進行作成の方法を示す。

そしてこの方法を活用し
C7sus4(構成音c-f-g-b)、Cm7(5)=7和音(構成音c-es-ges-b)Cdim(M7)=クリスタル和音(構成音c-es-ges-h)の三つの和音を各主題にして制作したポピュラー作品を提示する。

発表者はこうした「コード進行からのポピュラー楽曲作曲」の手法をビートルズ作品から学んできた。そしてこれらの和声進行を不定調性進行
(単純に調が定められない和声進行)と呼んでいるが、本発表で改めて「和声進行によるポピュラー作曲手法」についてその可能性を述べられればと考えている。

今回もまた、例示するポピュラー和声進行の事例や考え方等について、クラシック音楽の側から提言を頂ければ幸いである。

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