2014年3月21日金曜日

日本音楽理論研究会第14回東京例会 発表概要  稲森訓敏

「「音楽のリズム」━マティス・リュシーとあなたの《演奏・指導》を変える彼の実用的リズム理論━」

 今から約140年位前、ヨーロッパにおいて、当時の演奏家たち(リスト、ニコライ・ルービンシュタイン、ハンス・フォン・ビューロー等)の演奏に多大な影響を与えた、マティス・リュシーの簡単な紹介と彼の実用的リズム理論について発表を行いたいと思います。今回は彼の実用的リズム理論の解説と実用性の証明のためのピアノ演奏による実演も同時に行います。なおこの理論はリュシーの画期的な理論「音楽表現概論」の中の一部の理論で「音楽表現概論」の発表はまた日を改めて発表させていただきたいと思います。

 マティス・リュシーは1828年スイスに生まれ、日本ではほとんど知られていませんが、ダルクローズの師であり、パリのコンセルヴァトアールの教師もしていて、ピアニストのコルトーなども彼の教えを直接受けた生徒の一人です。生涯に「ピアノ教育法の改革」「音楽表現概論」「音楽のリズム」「近代音楽におけるアナクルーズ」「記譜法の歴史」「ベートーベンの悲愴ソナタ」等の著書を残し、生涯、リズムと表現の理論を探求し191082才で亡くなりました。


 彼のリズム理論の特徴はその実用性にあり、この理論は演奏のために生み出されたもので作曲のためではありません。実用性を具体的に説明しますと、まず曲のフレージングを行い、その後3つのアクセント(メトリックアクセント、リズムアクセント、パセティックアクセント)を記入し、その分析結果を基に表現を完成させるという非常に単純な方法です。ただ方法は単純ですが、フレージングの分析にも分析のための法則があり、アクセントの分析にも分析のための法則あり、この法則こそがリュシーの理論の最大の特徴であり、これが我々の演奏を変化させる最大のカギなのです。

今回の発表ではこれらの法則を用いて曲を分析し、その分析結果を基に表現を作ってゆく実演を行います。これによってリュシーメソッドの全体を理解していただけたら幸いです。

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