2013年11月10日日曜日

第13回東京例会 発表概要 大野聡

 来る2013年12月8日(日)に行われる日本音楽理論研究会第13回東京例会で発表する大野聡氏の発表概要を掲載いたします。

 「モーツァルトにおけるソナタ形式と多声音楽技法の出会い(弦楽四重奏曲第14番ト長調K.387第4楽章)」 

 「ヴィーン古典派」と後に総称される作曲家たちに共通する活力源としてあげられる技法が「主題労作」によるドラマティックな展開を活用した「ソナタ形式」であり、それをハイドンが「弦楽四重奏曲集作品33」によってほぼ確立したことが知られている。

 モーツァルトはそれらに刺激されて6曲の「弦楽四重奏曲」(通称ハイドンセット)を作曲し、この方面でのさらなる表現の拡大を果たしたわけだが、同時期にヨハン・ゼバスティアン・バッハの音楽(多声音楽)にも出会い、その影響を受けてもいた。

 「ソナタ形式」と「多声音楽」、この時代様式も異なる技法を融合した密度の高いドラマ性は円熟期のモーツァルトの特徴の一つでもあり、様々な様式を吸収し独自の世界に収斂していくモーツァルトならではの興味深い一面でもある。

 その試みが顕著な最初の作例としては弦楽四重奏曲第14番ト長調K.387(ハイドンセットの第1曲)の最終楽章が挙げられるであろう。この楽章の構成を読み解くことは後の円熟した作品群を理解する一手段となるかもしれないと仮定し、特に「ソナタ形式」に構成された楽章の内部に含まれる「多声音楽」の要素を拾っていきたい。

 楽章のどの部分でどのように多声技法が使われているかを追いながら、モーツァルトが多声的な構築を盛り込んだ効果を(あくまでも最初の試みの例にすぎないが)確認していくことにする。 


 なおモーツァルトはこの楽章をもって「ソナタ形式」楽章に「多声技法」を盛り込む技法を完了させたわけではなく、その後さらに洗練された手法でより深い表現を引き出した作品(楽章)を生み出している。そこで当楽章が残した問題点(発展の余地)についても言及し、(可能な限り)後続作品の作例をも挙げて、(一曲の分析にとどまらず)モーツァルトのこの方面での発展についてのさらなる関心につなげてみたい。

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